「ダイバーシティ」と両立支援

「ダイバーシティ」。この言葉を最初に聞いた時は、某テレビ局のある町のことだと思いました。「ダイバーシティ」は多様性と訳されますが、もともとは、アメリカで女性の積極的な採用や差別ない処遇を実現するために広がったもの。その概念が広がりを見せ“多様な働き方”を受容する考え方として使われるようになったということです。日本においては、性別、価値観、ライフスタイル、障害等の面に注目した“多様な働き方”として捉えられています。
今年の2月に厚生労働省から「事業場における治療と職業生活の両立のためのガイドライン」が公表されました。このガイドラインはがんなどの治療が必要な疾病を抱える労働者に対して、事業場において適切な就業上の措置や治療が行われるように、事業場における取組みをまとめたものです。背景には、治療の進歩により、がんが「不治の病」から「長く付き合う病気」に変化し、仕事をしながら治療を続けることが可能な状況になってきたことがあげられます。実際に65歳までに、7人に1人ががんを経験すると言われています。労働者から、「がんになって手術をしたが、今後も治療をしながら働きたい」と言われたら、受け入れる事業場側も対応に悩むことが少なくないと思います。このガイドラインでは、治療と職業生活の両立のために環境整備を行い、本人を通じた医療機関と企業との情報のやり取りの方法が示されています。医療機関と企業で情報のやり取りをすることで、企業ががんに罹患した労働者に対して適切な配慮を行うことが期待されています。
昔、「24時間戦えますか?」というフレーズのテレビCMがありましたが、健康で何の問題もなく働き続けることができる労働者を企業は求めていました。しかし、少子高齢化に伴う労働人口の減少。価値観の多様化やワークライフバランスへの考慮など、企業を取り巻く環境は変わってきています。病気にかかっても働くことができる人材を企業の配慮によってうまく活用することが、求められる時代になってきています。

医療法人社団成澤会 清水橋クリニック 労働衛生コンサルタント 医師 古川 泰

挿絵:special thanks gallery ogiwara

2016年10月15日