長時間労働と健康

1998年。当時、入社2年目の社員が長時間労働の後にうつ病にかかり自殺するという事件がありました。裁判で会社の責任が争われ、2000年に会社の安全配慮義務違反を認める判決が出ています。この判決をきっかけに、長時間労働による健康障害を防ぐため「過重労働による健康障害防止のための総合対策(平成 18 年 3 月17日付け基発第 0317008号、平成20年3月7日付基発第0307006号で一部改正)」などの施策が厚生労働省から出され、長時間労働者に対する医師による面接指導の実施が求められるようになりました。しかし、先日、同じ会社で同じような事件がおこり報道されています。その会社では、労働基準監督署の査察が入り、世間からのバッシングもあり、労働時間の短縮に取り組んでいます。
一方で、長時間労働をすると健康にどのような悪影響を与えるのでしょうか。ある研究結果によると過去 1 ヶ月間の時間外労働が約 80 時間以上では、月時間外0 時間に比べて心筋梗塞リスクが 1.9 倍でした。また、過去 1 年間の勤務日の睡眠時間が 1 日 5 時間以下では、6 ~8 時間に比べて心筋梗塞リスクが 2.5 倍でした。長時間労働者の健康保持対策としては、適切な睡眠時間の確保することが重要だと考えられます。また、長時間労働者では精神的負担が増加している場合が多く、心の不調が生じる可能性もあります。しかし、心の健康を取り戻すために職場外での時間(睡眠・休養、家族・友人と過ごす時間)が必要ですが、長時間労働ではこれが不足してしまいます。心の不調から精神障害、自殺へ発展する可能性が高まります。
今回の事例のように、事件が起こってから対応するのではなく、目先の経済的な観点からだけでなく、働き甲斐、労働者の生活・人生と仕事のバランスを考えて業務を設計すること、労働者の健康を考えることによって、長時間労働対策を行っていく事が必要です。極端な長時間労働の削減や休暇の取得、十分な睡眠時間を確保するための対策など、未然に問題の発生を防ぐことが重要だと思います。

医療法人社団 清水橋クリニック 労働衛生コンサルタント 医師 古川 泰

挿絵:special thanks gallery ogiwara

2017年01月15日